論文 - 金子 政時
-
多施設共同研究による本邦における妊婦血清トリプルマーカー基準値設定の試み
宮村 庸剛, 斉藤 仲道, 東野 純彦, 永田 新, 肥田木 孜, 石丸 忠之, 増崎 英明, 大濱 紘三, 三春 範夫, 久永 幸生, 末永 五郎, 末永 俊郎, 波多江 正紀, 上塘 正人, 布施 正樹, 平井 雅直, 永田 秀昭, 黒木 達, 黒木 透, 薬師寺 道明, 堀 大蔵, 中谷 剛彬, 鷲見 整, 和氣 徳夫, 松田 貴雄, 河野 勝一, 上妻 益隆, 高山 俊弥, 池ノ上 克, 金子 政時, 立山 浩道, 嶋本 富博, 金澤 浩二, 佐久本 薫, 伊東 武久, 川野 秀昭, 野見山 亮, 松井 和夫, 山崎 和文, 品川 裕利, 宮川 勇生, 穴井 孝信, 吉松 淳, 柏村 正道, 吉村 和晃, 石川 睦男, 玉手 健一, 香山 文美, 徳永 昭輝, 越智 博, 山中 研二, 尾上 敏一, 山崎 洋, 新川 詔夫
日本産科婦人科學會雜誌 51 ( 11 ) 1042 - 1048 1999年
記述言語:日本語 掲載種別:研究論文(学術雑誌) 出版者・発行元:日本産科婦人科学会
母体血清トリプルマーカー値(母体血清α-フェトプロテイン,フリーβ-ヒト絨毛性ゴナドトロピンおよび非結合型エストリオール)には人種差を認めるとの報告がある.そこで,これらのマーカーの本邦における基準値を設定するために,多施設共同研究を行った. 母児ともに合併症のない1,641例の正常妊婦(妊娠12∼20週)を対象として各マーカーを測定し,妊娠週数ごとの中央値を算出した.平均年齢は30.5±4.8歳(17∼46歳),妊娠週数および母体体重の平均は,それぞれ14.9±1.8週(12∼20週)および52.6±7.0kg(35∼94kg)であった.その結果,α-フェトプロテインの中央値は,妊娠12週の18.1ng/mlから妊娠20週の85.55ng/mlまで,同様に非結合型エストリオールは0.35ng/mlから3.34ng/mlまで漸増し,フリーβ-ヒト絨毛性ゴナドトロピンは妊娠12週の53.85ng/mlがら妊娠20週の9.95ng/mlまで漸減した. 次いで7例の21トリソミーについて,上記より得られた中央値より各マーカーのMoM値を算出して検討したところ,α-フェトプロテインのMoM値はいずれも1.0未満,フリーβ-ヒト絨毛性ゴナドトロピンは1例を除いていずれも2.0以上であり,非結合型エストリオールは,1例を除いていずれも1.0未満であった.なおα-フェトプロテインおよびフリーβ-ヒト絨毛性ゴナドトロピンは体重による補正を行い,非結合型エストリオールは補正しなかった. 以上より,トリプルマーカーは21トリソミーのスクリーニングに有用と考えられるが,今後,一般の産科臨床において母体血清マーカーによる出生前診断が普及するようであれば,さらに例数を追加してより高精度の基準値を設定する必要がある.